(7)乾燥草原(ステップ)に雪が降る?!(冬) Hauts Plateaux

 山脈を越えたこの辺りから空は澄んで、風はやや乾燥してきます。緑はどんどん減って、涸れた谷やワディ(涸れ川)*がたくさん出現します。草も点々とあるだけです。しかしまだ「砂漠」ではありません。乾燥草原(ステップ)です。何と大きな湖に出くわしました。雨期だけ出現するという幻の湖です。そのまわりには草が生え、羊や山羊が群がって食べています。近くでは羊番の少年が、所在なさげに寝そべっていました。

      *乾燥地帯では雨期だけにできる川のこと。乾期にはまったく水はない。








雨期だけの湖 
(L'AlgerieAujourd'hui)
ステップ(草原)でラクダを飼う遊牧民のファミリー

 さらに進むと、砂ではなく土だけがえんえんと続く「土漠」(どばく)と呼ばれる地帯に出ます。遠くに羊と山羊の大集団が一カ所に集まっています。道路を離れガタゴトと荒れ地に入ってみると、何とその「集まり」の中心は「井戸」でした。

 地面に掘った直径2mくらい、深さ5mくらいの大きな井戸です。そこに羊飼いの人達がオイルカンにひもをつけて水をくんでいます。次々と上がってくる水は樋(とい)を通って大きな木製の桶に入ってゆき、それを山羊(やぎ)と羊が押し合いへし合い、争うように飲んでいるのです。

 「ザーザー」という水の音と、「メー」「メー」「バー」「バー」という鳴き声、それに唾(つば)がとぶようなアラビア語が混じってにぎやかな限りです。彼らにあいさつをして、そのバケツに手を入れてみると、澄んでいて冷たく感じました。100kmも離れた山に降った雨が、地下水となってはるばるここまで来ているのでしょう。


   
別のポンプ式井戸(筆者写)

 彼らと別れてさらに進むと、道路の両側がまるで雪か霜が降ったように真っ白になっています。まわり一帯が全部そうです。車から降りて触ってみると、雪ではなく
でした。地下にたくさんある塩分が、地下水に溶けて毛管現象で地上に現れ、水分だけが蒸発して塩が残るのです。この一帯は少雨だけでなく、土中の塩分のために「不毛の地」となっているのです。

 あのイラクの「メソポタミア文明」は、これが原因で滅びたともいわれています。アメリカ、オーストラリア、ロシアをはじめ、世界中にはこのような土地がたくさんあり、今も増え続けています。人間が
灌漑農業*をすると、この様な土地がさらに広がって行くともいわれています。

*灌漑農業 かんがいのうぎょう・・・地下水を汲み上げたり、水路を造って水を田畑にうるおし、農業をすること乾燥(かんそう)地帯でさかんにおこなわれる。

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