(6)海岸アトラス山脈を越えて(秋冬)
L'Atlas de Blida, a Medea アルジェから50km
ティパサから少し戻るような形で、内陸のブリダ市へ向かいます。内陸に向かうと丘が続き、車は畑や牧場のある農場を通り過ぎてゆきます。オリーブやオレンジ、ザクロ、ブドウの木のほか、ジャガイモ、大根、人参といった根菜類が多くみられます。道路の両側には大きな桑の並木が植えられ、山にはユーカリやコルクがしの木が多くみられます。どれも地中海沿岸の「乾燥」に強い作物、植物ばかりです。
ブリダの街から奥に見える一段と高い山は、海抜1550mのシュレア山です。ここでは、何と秋には「松茸*」がとれます。現地の人は食べません。真冬には頂上付近が、雪で真っ白になっていることがあります。驚いたことに、小さなスキー場もあるのです。「年中暖かい」と言われる地中海岸からわずか35kmの所に、雪が積もるのです。サハラ砂漠からも、100kmくらいしか離れてはいません。何か不思議な感じがします。天気の良い日には、頂上からアルジェまで40km続く大ミティジャ平野が見渡せ、その向こうに青い地中海が広がっています。大変眺めの良いところです。
* 松茸 まつたけ 国内の何カ所も産地があるが、香りは日本産に劣る。放牧の牛の食料となっていることもある。
海岸アトラスの羊(筆者写)
一度ブリダの街に戻って、砂漠へ向かう道をとりましょう。やがて、まわり一帯に広がるブドウ畑地帯を過ぎると、だんだん道は険しくなり、曲がりくねりながら上ってゆきます。この手前少し入ったところにはメディアの町があり、この国有数のワインの産地になっています。ついに標高1230mの峠の達しますが、このあたり濃い霧で前が見えません。地中海からきた風が、最後の湿気をもたらし、おいしいブドウを作り、それが美味いワインとなるのでしょう。
この国は、サウディアラビアのような厳しいイスラム教国とは異なり、「飲酒」が禁じられていません*。フランスの植民地時代には、フランス人がブドウの木をたくさん植えました。そのため、独立後の現在でもたくさんブドウはとれますが、小麦をはじめとする主な食料は外国から買わなくてはいけません。こんなところに「植民地経済*」の後遺症* があるのです。
* 飲酒 いんしゅ ・・イスラム教では原則的に禁じられているが、国によって厳しさが異なる。
* 植民地経済 しょくみんちけいざい ・・支配している本国に合わせた経済の仕組み.
すべてのものが本国のために生産される.
* 後遺症 こういしょう ・・悪い影響が後まで残ること
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