(11)動く砂山(西大砂漠) Grand Erg Occidental 
                         アルジェから700km
(直線で600km)

 さて、ガルダイアを後に、さらに南へ向かって走ってみましょう。町からでるには、坂を上って再び国道にでます。この辺りは、だいたい海抜500mくらいです。これから私たちが行こうとしているサハラの道は、次のオアシス、エル=ゴレアまでは250km、車で約2時間半の距離です。

ガルダイアからエル・ゴレアへの道
道路標識はアラビア語とフランス語で「エル・ゴレア250km」と表示されている、道は写真のように一直線(筆者写)
 およそ1時間半くらい走ると、前方にオレンジ色に輝く大きな砂丘が見えてきました。この迫力には、息をのみます。車を停めて登ってみました。高さが50mくらいはあろうかという砂丘は、いくら登ろうとしても足もとがくずれてなかなか前へ進めません。砂のキメが細かく、手ですくおうとしても指の間からサラサラと流れ落ちてゆきます。まるで砂時計の砂のようです。おおむかしから大きな岩が砂漠の熱でのびたりちじんだりすることを繰り返し、ここまで細かくなるとは驚きです


サハラ西砂漠の大砂丘と筆者の愛車プジョー104ZS

 砂丘の表面には「風紋」(ふうもん)といって、風によって作られた規則的な模様がついており、太陽の位置によって美しい陰影(いんえい)が変化してゆきます。そうしている間にも、沙漠を渡る強めの風は、砂を運んでその斜面を駆(か)け上がり、稜線(りょうせん)の部分から下へ落として行きます。これが休みなくおこなわれる結果、砂山自体が移動するようになるのです。この砂山も、一年後にふたたび訪れてみると、10kmも風下方向に移動していました。

西部大砂丘の風紋 「砂漠の世界」より転載
サハラの砂丘地帯を宇宙の衛星から見るとこうなります(クリック)

蠍(サソリ) (スコーピオン)

 砂の上には小さな足跡が無数についています。
サソリの足跡です。夜行性なので、昼は物陰や石の下などでじっとしているのです。うねったような跡は、きっとでしょう。赤と黒のどぎつい色で猛毒を持つといわれています。そして、動物の糞らしいものの上には、蠅(はえ)がたかっています。ここから数十km以内には人家らしいものもないのに、いったいどこからやってくるのでしょう。

 しばらく走っていると、道路から少し入ったところに、ミイラになった
ラクダの死体がありました。カラカラに乾いて白骨に皮が張り付いています。きっと自動車にあたって死んだものでしょう。まわりには、ロバの頭蓋骨(ずがいこつ)や骨組みだけの自動車の車体やぼろぼろのタイヤの破片などが、えんえんと散らばって続いています。

                 
あちこちにあるくち果てた自動車(筆者写)
              


              
♪♪♪
つきのさばくを はるばると
たびの らくだが ゆきました・・・
きんのくらには おうじさま
ぎんのくらには おひめさま
ふたつ ならんで ゆきました・・・
 皆さんも知っている有名な童謡に「つきのさばく」というのがありますね。この詩を作った人は、きっと砂漠を旅行したことはないのでしょう。本当の砂漠は「生か死」の厳しいところです。歌のような夢やロマンはかけらもありません。もしかしたら、歌にも詩にもならないかもしれません。
 
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