2 ヴェーリンク墓地 <現シューベルト公園> Waeringer Friedhof
Semperstrasse 64A / Schrottenberggasse →ここへの行き方 衛星写真と地図(Google)
正門右手の表示 |
何の偶然か、私が泊まったアパルトマンは、市電の通るヴェーリング通り(シュトラッセ)からひとつ入った路地(ヴァン・シュヴィーテン・ガッセ)にあった。そのヴァン・シュヴィーテンは、モーツァルトに多大な影響を与えた男爵の名前で、映画「アマデウス」の中にも出てくる。この人は、後にモーツァルトの葬式の費用も出したのである。
さて地図を見ると、宿舎からは歩いても行ける距離のようだ。早速、散歩がてらに行ってみた。しかし、結構距離はあった。電車道の進行方向左手にある現在は塀に囲まれた部分だけ墓地が残されているが、普段は鉄の門は閉まっている。(下の版画の中央部分) |
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1832年頃のヴェーリング墓地(版画) |
現在の正門 |
その反対側(裏側)が小振りな公園になっている。ここももと墓地、現在の「シューベルト公園」である。松らしい木がまばらに植わり、犬の散歩の婦人がいたり、老人や子どもが遊んでいたりする。その公園の塀際に、ベートーヴェンとシューベルトの最初の墓が並ぶ。さすがに「元墓地」でも手入れは行き届いている。
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二人の最初の墓・左がベートーベン・右がシューベルト (2003年3月24日撮影追加・筆者写) |
”aeiou”というホームページのMusik-Kollegにはこう書いてある。
*ヴェーリンク墓地
1796年に始まり、1820年代から1830年代に再構築された ベートーヴェンとシューベルトの墓で有名である
1873年に閉鎖された後は中央墓地へ移された 1923年になって元のヴェーリング墓地はシューベルト公園
となったが、2つの墓は元のままで残されている。
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ベートーヴェンの最初の墓 |
二つの墓の間にある説明版* |
シューベルトの最初の墓 |
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*上の説明板の内容
ここはベートーベンとシューベルトが、最初に葬られた場所である。地元のヴェーリング墓地が閉鎖された後、後世のために恒久的な記念碑として、ヴィーン・シューベルト協会によって保存されてきた。 |
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ベートーヴェンの最初の墓の墓碑銘
シューベルトの最初の墓の墓碑銘 |
*シューベルト墓碑銘(記念碑)
その墓碑銘はオーストリア人の劇作家フランツ=グリルパルツァーによって書かれた。なおグリル=パルツァーはベートーベンのためにも、追悼文を書いている。蛇足ながら上のリンクにもあるが、彼の墓はヒーツィンク墓地にある
音楽界はこの地を一つの豊かな集大成の墓標とした。人々がそのより美しき調べを享受する望みとともに。フランツ=シューベルトここに眠る。1797年1月31日誕生、1828年11月19日死去。享年31才
(墓碑銘)
有名な話だが、シューベルトはベートーベンを「神」のように尊敬した。彼は生前一度だけ会っているが、その時はあまりの緊張ゆえに、ほとんど喋れなかったと記録が残っている。シューベルトは、死後にベートーヴェンのそばに埋めてくれるように遺言したといわれている。なお、ここより遠くないヌスドルフ通り(Nussdorfer strasse)*には、シューベルトの生家が残っている。
*当時はObere Hauptstrasseと呼ばれていた
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ベートーヴェンの頭蓋骨
「続音楽史の休日」より転載
(音楽之友社) |
音楽の友社「続音楽史の休日」(武川寛海著)によると、ベートーベンの死後についての記述がある。少し長いが引用する。
ベートーベンが死んだのは、1827年の3月26日で、29日に埋葬された。その4月4日にシントラーはロンドンにいるモシュレスにあてて、次のような手紙を書いている。
「・・・もうひとつあなたにお知らせしなければなりません。ベートーベンの葬られているヴェーリング墓地の墓堀人が昨日私どもの所へ来て、ベートーベンの頭を定められた場所に置いておくなら、1000フロリンを与えよう、という手紙をもらった、と報告したのであります。そのために警察はすでに活動を開始いたしました。・・・・」
(略)・・・ 埋葬してから36年たって、ウィーンの楽友協会はベートーベンとシューベルトの遺体の破損度を調べ、腐敗のひどくなるのを防ぐために、2つの墓を発掘することになった。1863年の10月13日の午後10時45分に、ヴェーリング墓地において先ずベートーベンの墓が、ついで11時にはシューベルトのが掘り返された。(略)
・・・ベートーベンの墓はそれから25年たって、1888年の6月21日にまた掘り返された。今度はウィーンの中央墓地に改葬するためである。・・・・(以下略)
かくして、二人の「骨」は、中央墓地(ツェントラル・フリードホフ)に移転するのである。
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