街角で出会ったひとびと |
朝夕の大渋滞 |
次の日の朝、バスで町の中心に行き、観光を始めることにした。当たり前のことだが、日本語が通じない外国では、概してバスは乗りにくい。しかし、滞在費を安くあげようと思ったのと、地元の人間が観察できるメリットがあった。朝のラッシュアワーなのでバスはどんどん来るけれど、行き先が番号とタイ文字表記だけで、どれに乗ったらよいか分からずまごまごする。驚いたことにはドアの付いていない車体の方が
多いし、車体も古いものが多い。そして、この暑さに冷房がないものの方が圧倒的に多いのだ。
もうひとつ驚いたことに、バスが完全に停まらないのに、客はどんどん降り、またどんどん乗っていくのだ。そして走っている車の間を、まるでミズスマシの様にスイスイ道を渡ってゆく。はじめはとても怖かったが、後には慣れて飛び乗り飛び降りの能力は、ここの人間と同じ力量になった。まことに慣れとは恐ろしいものだ。さらに驚いたことは、料金が均一で一区3.5バーツ(日本円でおよそ10円)なのだ。給与ベースが日本より低いとはいえ、10円と言ったら日本の昭和何年頃のバス料金なんだろうと思っておかしかった。物価水準が日本の1/10としても安すぎる。食料や鉄道料金など公共料金的なものは、特に安いと感じられた。贅沢をしなければ、この国では安く暮らせそうだ。日本で稼いで、タイで生活するのも良いかもしれない。
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閑話休題、観光の方だが、歴史関係やガンダーラ仏など仏像の展示の多い国立博物館からまわることにした。日本人用の日本語ガイドツア−に入ると、楽にたくさんの場所を要領よく回れる。しかし、日本語ツア−の値段は、現地の物価からすると極端に高いのだ。そこで、自分は旅慣れてると自負して、一人で行動してみたのである。
地図を見ながら歩き回り、やっとのこと国立博物館らしい建物に行き当たった。しかし周りを歩いても入り口が分からないし、人の気配がない。歩き回っているうちに昼が来たので、近くにあった小綺麗なタイ風「ロッテリア」に入って、480円相当の定食をとった。その後、若い店長に「博物館がしまっているのだけれど・・」と聞いてみると、「開いているはずだ。変だな」という。私は、たまたま観光局の電話番号を持っていたので、彼が電話でたずねてくれた。その結果、彼は、「今開いているそうだ。問題ないよ」と言った。
ガンダーラ仏 (筆者写) |
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スタンディング・仏陀 (筆者写)
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彼の英語は分かりやすい。変ななまりもない。ここの大学生など若い人たちは、たいてい英語の本を持ち歩いている。そして、概してよく話せる。最近のアジア、ヨーロッパでの共通の傾向でもある。少し雑談をしていたら、彼がこう言った。
「あなたは一人で観光しているのか?」
「そうだが」
「何故か?」
「小生は、日本人グループのツアーをあまり好まないのである」
「それはよいことだ。この店にも日本人がたくさん来るが、日本人だけでわいわいやっている。そして、全体的には英語が下手で、あまりしゃべろうとはしない。土地の人ともあまり話さない。話しかけても避けるようにする・・。」
ちょうど忙しい時間からずれて一段落し、客が他に2人しかいなかったのもあってか、彼はずいぶん話相手をしてくれたが、結構辛口の日本人評であった。これが、タイ人のすべての意見ではないにしても、当たっているからきつい。ニュージーランドでもオーストラリアでも、店の人から同様のことを聞いた。ワナカというニュージーランドの田舎町のみやげ店の女主人は、さらに続けて、「日本人は店の品物に触りすぎる」とも言った。私もいろいろ見聞きしているので、頷きながら聞くのであるが、日本人である私が、同国人の「悪口」を聞くことが多いのは、何故なのだろうか。 |
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さて再び博物館まで戻ってくると、若い男が近づいてきた。
”Are you going to National Museum?”"Yes"
「私は大学生だが、今日は特別な催し物があって、臨時閉館中である。また4時に開館するので、そのとき入場すると、タイのダンスも見られる。」と片言の英語で教えてくれた。これは困ったなという顔をしていると、
「有名なStanding Budda(立ち姿の大仏像)が今日は入場料がタダだ。タクシーがいるか?呼ぼうか?」としつこく言う。
「それではそこに行くが、タクシーは要らない。バスで行く」と言うと、実にいやそうな顔をして行ってしまった。歩いていると、人力三輪タクシー、トゥクトゥク
やタクシーが次々に止まって、乗れ乗れと誘ってくる。少しずつ分かってきた。此処では、向こうから声をかけてくるのは、「要注意」なのだ。私は、「ターゲット」だったのだ。
トゥクトゥク
そのあと「スタンディング・ブッダ」に行ってみたら、もともと入場料などは取っていず、何なく入場できた。折り返して、4時過ぎに博物館に帰ると、「開館は4時までですよ」と窓口嬢がすまなそうにいう。やられた! こうして、博物館入館は、翌日まで持ち越しとなったのである。何が起こるか分からないのが、旅の「楽しさ」である。
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