こどものための異文化理解
(7)食べてよい肉、悪い肉は民族や宗教でちがう? |
みなさん、上の絵や写真を見てください。日ごろ、みなさんが食べている物はいくつありますか?また、家族もぜったい食べない物はどれですか?こうしてみると、いくつかは食べない物が入っているように見えます。たとえば、犬やカタツムリやハト、ラクダは食べない感じがします。他の国でもそうでしょうか?たしかに日本国内ではふつうは食べませんが、調べてみると上にある物は全部食べるらしいのです。それを少しだけ見てゆきましょう。 |
1 日本で食べる物、食べない物 上の段(だん)の絵のうちで、ふつう食べないのはカエル、カタツムリ、ハトですね。ハチは「蜂の子」として食べる地方もあります。またカエルはいちぶの地域で食べる所もあります。味はニワトリに似ているそうです。これに対して、タコ、鯨、魚類、アヒル、ニワトリは全国でふつうに食べられています。 下の段でふつう食べないのは、ラクダ、犬、ウサギでしょうか。これに対して、羊、ブタ、牛、馬はふつうの食べ物です。馬も「さくら肉」といって、九州を中心に食べられていますし、ソーセージやカンズメの材料となっています。またタヌキ(タヌキ汁)、ウサギはあまり一般的ではありませんが、食べる人もいます。 |
2 外国で食べる物、食べない物 上でみた「日本人がふつう食べる物」でも、タコは中国では好まれませんし、西洋でも「デビル・フィッシュ(悪魔の魚)」と呼んで食べない国もありますが、またぎゃくにギリシャ、イタリアなど地中海沿岸のように食べる国民もいます。 クジラはむかしから日本人の大切なタンパク源でしたが、外国では「保護すべき最大のほ乳類」と言って取るのを禁止している国も増えました。これになじんできた日本人としてはつらいところです。カエルやカタツムリは、フランスでは食用として育てられてレストランに出ています。またハトは、スペインや南フランス、エジプトなど地中海ぞいの国々では、高級な食べ物になっています。日本人がまったく食べない犬(狗)は韓国、中国では大事な食材のひとつです。肉屋の店頭には犬がぶら下がっています。 ラクダは日本ではめずらしい動物ですが、乾燥(かんそう)地帯では食べる所もあります。(ふつうはサバクでの交通手段として使い食べないことが多い。)しかしオーストラリアでは、むかしラクダを輸入をしてから増えすぎて困っているので、「ステーキ」としてレストランで食べられますし、ワニやエミュー(鳥)やカンガルーのステーキも食べられます。 これで驚いてはいけません。ぎゃくに外国人から見て、日本人がナマコやウニ、「イカの塩から」を食べているのは理解できないかもしれません。まとめると、どれを食べるの良い、悪い−ではなく、それぞれの国の環境(かんきょう)や生活習慣から来ているものなのです。自分たちが食べないからといって、他の国の食べ物のことはとやかく言えませんね。 →その他にどんな物があるか、知り合いの外国人に聞いたり、インターネットで調べてみましょう |
3 宗教によって食べて良い物、食べてはいけない物が決まっている 日本では明治以前は仏教の影響(えいきょう)が強かったので、牛、山羊、馬など「四つ足」の動物は食べてはいけませんでした。おもにトリと魚を食べていました。牛はおもに、田畑を耕したり作業に使っていました。よだんですが、平安時代の貴族は牛乳を飲んでいた−と言われています。いちおう「禁止」でしたが、中には、肉類をこっそり食べていた人たちもいました。ウサギが今でも「一羽、二羽」と数えるのは、その頃のなごりです。とり類は食べても良かったからです。明治の「文明開化」の時代に、外国人が牛肉を食べるのを見て、日本人も食べるようになりました。現在日本人は宗教の影響を受けなくなったので、「食のタブー*」はなくなりました。 ところが外国では、「宗教の教え」を大切にする人たちがたくさんいます。それらのうちにはきびしい禁止事項(きんしじこう)(=タブー)があります。たとえば、イスラム教では「ブタはいやしい動物」なので食べてはいけません。とうぜん、ブタ肉から作ったハムもソーセージも食べてはいけません。また食べられる羊、牛や鳥でも、ちゃんと「聖職者(お坊さん)がおはらいをした物」でないと食べてはいけません。これを「ハラル*」と言います。イスラムと関係の深いユダヤ教でも同じようにするようです。またイスラムやヒンズーではアルコールも禁止されています。 インドのヒンズー教では牛(特に白色)は「神の使い」なので、決して食べてもいけませんし大切に扱われます。またブタも食べないことが多いようです。またユダヤ教では「ひづめが割れている動物=馬、ブタ」は食べられません。同様に「海や川でヒレやウロコのない物=クジラなど)は食べてはいけません。キリスト教はふつうは何でも食べられるようです。(一部、肉を食べない菜食主義者=ヴェジタリアンがいます) こうしてみると、宗教の別なくみんなが食べられるのは、トリや魚のようですね。 日本人は戦後、宗教心がうすくなってきて、外国の宗教や宗教から来る行事、慣習(かんしゅう)に無関心、時には無神経ですが、外国で旅行する時は、「郷(ごう)に入りては、郷に従え(その土地の習慣ややり方を尊重すること)」でじゅうぶん調べて行動する方がよいでしょう。また他の宗教のやり方を批判(ひはん)することもさけるべきです。 最近は日本も国際化されて、多くの外国人がやってきたり住んでいますが、お家に招く時でも気配りが必要です。インドの人に「カレーの国だから・・」といって「ビーフカレー」を出したり、イスラム教徒(モスリム)に「これは日本人の好物・・」といって、トンカツやハムエッグを食べさせることがないようにしなければなりませんね。 *ハラル・・・日本に住んでいるイスラム教徒(モスリム)のために、食べて良い物、悪い物のリストがある また食べて良い物でも正しい手続きがすんだ物でないと食べられない 食べられる物にはハラルマークが付いている 参考サイト:「たまねぎ地獄」/「ウェブ・ジャーニー」 |