知っているかな?こんなちがい


日本にはないぎょうじ・見られない行事 (小学高学年向き)
 
 服も生活も食べ物もちがうように、国がちがえば一年の行事(ぎょうじ)もちがってきます。いちばん多くそのもとになるのは、宗教(しゅうきょう)です。その他に、その国の歴史(れきし)やその国ができる時のいきさつ(たとえば独立、憲法などの記念日)からきているものです。

 私たちの日本では、宗教(仏教、神道しんとう、キリスト教など)が国の宗教*1ではないので、祝日(しゅくじつ)*2には宗教行事にちょくせつ関係(かんけい)したものはありません。「成人の日」も「建国記念の日」も「春分の日」なども宗教行事ではありません。

*1 日本国憲法にほんこくけんぽうでは「信教の自由」といって、宗教は信じても信じなくても良い、国はどの宗教もとくべつなあつかいはしないと書
  かれています。(第19,20,21条)

*2 国民の祝日こくみんのしゅくじつは法律で決まっています。

 しかし、「春分しゅんぶんの日」や「秋分しゅうぶんの日」の時には、仏教徒は墓参りに行くことが多いですね。「お盆ぼん」は仏教の行事ですが、国民のみんながする行事ではありません。でも祝日にはなっていないけれど、私たちの行事には元は宗教からきてものも多いのです。その多くは全国各地の祭り(まつり)としてつづいています。それらはお寺や神社と深いつながりがあります。私たち日本人の生活はそういうものと長くかかわってきました。べつの言い方では、「生活の一部」といってもいいでしょう。

 同じように、キリスト教の国やイスラム教の国、ヒンズー教などの国ぐにでも、そういう行事がたくさんあります。私たちがあたりまえのようにしている「クリスマス」はキリストが生まれた日を祝(いわ)うもので、キリスト教徒ではない多くの日本人にはもともと関係がないものです。それにキリスト教国では、「クリスマスは家族だけで静かに祈(いの)りとともにすごす日」で、日本のようなすごし方はしません。かわりに、新年はさわいで迎むかえます。

 さてここでみなさんがあまり知らない宗教の一つ、イスラム教の行事をごしょうかいしましょう。イスラム教は、キリスト教、仏教ともに「世界の三大宗教」の一つで、信者は10億(おく)人以上いると言われています。そのたくさんある行事のうち、今回は「犠牲(ぎせい)祭(羊祭り)」をみてみましょう。
●犠牲(ぎせい)祭 (羊を「生けにえ」にする祭り・「羊祭り」ともいう)
                <イード・アドハー(ライード・エル・アドハー)> 
(この祭りのいわれ)
 「犠牲
ぎせい祭」は、第12月の8-10日のメッカ巡礼じゅんれいの最終日に行われます。巡礼の参加者は、この日にメッカ郊外のミナーの谷で、動物(羊、やぎ、牛、ラクダ)のぎせいを行い、それを貧しい人たちと分かち合います。また、この日には巡礼に参加しない人も同じことを行います。

 この犠牲について、コーランにははっきりした説明がありません。ただ、ムスリムの間では、アブラハムが神の命令
めいれいで息子むすこを犠牲ぎせいとしてさし出した時、大天使ガブリエルが息子と動物を取りかえたとのいわれにならったという説もあります。

 この「羊を殺す」というこの行事は、米作り・農作業をしてきた日本人には、たいへん「残酷ざんこく」に見えますが、モスレム(イスラムきょうと)の宗教の大事な行事であって、かんたんに言うと「宗教のきまり」です。だから、日本人の感覚(かんかく)でこの行事を「わるい・ざんこく・・」と判断するのはよくありません。(日本でも中国でも大むかしはまったく同じこと=いけにえをしていました。)そういう気持ちで下の写真を見てください。さいごまで読むと、たいへんまじめな行おこないだということが分かります。

(注意:気のよわい人は下の写真は見ないでください)
写真をとばす

       羊の「処理しょり法」    (ご注意:以下の写真は2年分を合わせてあります。)
 
家族みんなで押さえて
暴(あば)れる羊の
手足をしばる

2 
みんなで押さえて
のどもとを切る

 
3 血を出す(ぬく)
4 羊は苦しいので
  あばれ出す

5 頭を中心にくるくる
  回り出す(一回転)

6 血がぬけてぐったりなる

7 手足の先を切り落とす

8 皮と肉の間に
  太い針金を入れる

9 つぎにビニールパイプ
  をつっこむ

10 そこに空気をふきこむ

11 羊の体が空気で
  パンパンにはれあがる

12 はしから少しずつ
  皮をはがす

  13 さかさづりにする

14 首を切りおとす









 

15 下足から首の方に
  皮をはがす


16 腹をさく




 写真の一番下の部分が
 はいだ毛皮の部分、
  白いのは脂肪(しぼう)



17水道水で洗い流しながら、
  ないぞうを出して
  金ダライに入れる 

18
すんだら最後は一日中
ぶら下げておく

19
切り取った頭は、庭で焼く
(頭は大変なごちそう!)


・こうして数時間かかって
 羊は処理される。

肉の分けかた:羊を買った家族、その親せき、貧しい人々がそれぞれ1/3ずつ
 ここがこの宗教の良いところで、いつも貧しい人のことを考えています
 でも今の日本人はあまり貧しい人のことは考えることが少ないようです。

(その例;イスラムでは金持ちが貧しいものにあたえるのは義務
ぎむである。これをザカートという。)

*なお、羊は食べたり利用して、捨てるところはありません。

この日の夕方から夜にかけて、パーティーをし羊の頭(脳みそ)などが振る舞われます。


みなさん、どうでしたか?イスラムに興味きょうみをもった人は、他にどんなものがあるか調べてみましょう。
少しだけヒントを言います・・・
ラマダン月に断食だんじきを行います。大事な行事です。そしてその目的は?

        ・ラマダーン月・断食(アラブ・イスラーム学院)
        ・下は少しむずかしいですが、イスラム全体のくわしいことが知りたい人は大人に読んでもらってね
         
       ・その他のことはここでしらべてみましょう
          
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    参考
さんこう

 イスラム教徒が豚(ぶた)を食べないことはよく知られている。豚以外の牛や羊の場合といえど、正しい殺し方によるものだけが食べられる。コーランによる正しい殺し方とは、『
慈悲じひ深く慈愛じあいあまねくアッラーの御名において』ととなえながらのどの血管けっかんを切る。これが動物にもっとも苦しみをあたえない方法である。自然死や事故死したものは食べてはならない。魚でもウロコのない魚は食べてはいけない。

 イスラム教国で売られる肉にはハラル・マークがついている。ハラルとはイスラムの教えにかなったもの、という意味なのでイスラム教徒が安心して食べられる。ハラル食品は衛生
えいせい上のけんさも行なわれるので、非イスラムも利用する。ハラルでないものはハラムでムスリムは口にしてはいけないきまりだ。このように世界中のモスリムはハラルだけを食べているのだ。

                  
写真は「ハラル・マーク」(中央の丸)のついた食品の袋
                  
                            
Doa Indonesia」より転載