5 玄奘三蔵縁ゆかりの高昌故城へ
高昌故城をゆくロバ車 (筆者写)
トルフアンから40kmの高昌故城へ行った。前漢の時代に、ここに屯田兵を置いたのがその始まりだ。唐の時代には漢族による麹氏(きくし)高昌国があり、西遊記で有名な玄奘三蔵が、ここで幽閉され講義をしたので有名な所である。 城郭外へ埃まみれのバスが着くと、そこにはロバ一頭が引くテント屋根付きロバ車が、十台くらい待ち受けていた。まわりに手作りの土産を持った子供が、うろうろしている。手工芸品を売って家計の足しにしているらしい。中国に限らず、発展途上国の子供達は実によく働く。
周囲5kmの城壁の内部は、千数百年の昔がしのべるくらい建物が残り、屋根こそ落ちているが、この都市がいかにスケールが大きくすばらしかったかが、容易に想像できた。壁はすべて日干しレンガ製であるが、砂漠の気候だからこそここまで残ったのであろう。ロバ車に揺られて十分くらいで、三蔵法師の講義所跡についた。丸い天井は落ち、雲一つなく濃い青空が見えている。当時20代の青年僧玄奘が、ここで一ヶ月間、仁王般若経を講義をしたのかと思うと、何ともいえない感慨があった。帰りに裏のわずかな草地を見ると、十数頭の羊が一心不乱に草を食んでいた。不思議なことに、まったく時代も場所も違う俳諧が脳裏に浮かんできて、自分でも可笑しかった。
夏草やつはものどもが夢のあと
高昌故城廃墟で草をはむ羊(筆者写)
三蔵法師講義所跡 (筆者写)
三蔵法師講義所跡の筆者とウィグル族老人 彼は観光客をラクダに乗せて生計を立てていた