4 中国でもっとも低く、暑く、雨の降らない都市、「火州」(トルファン)にて

バス車窓より見るトルファン盆地近郊の農村(写り込みがあります)

 バスに5時間半揺られ、トルフアンについた。漢代からシルクロードの要であったここは、土地の半分が海抜0m地帯で、近くのアイディン湖は−154m、イスラエルの死海に続き、低さ世界2位である。この「火州」、40度以上の日が年間で40日以上あるという。年間降雨量もたった16mmしか降らず、逆に蒸発量が3000 mmという。私が住んでいた乾燥したアルジェでさえ800mmだった。因みに岡山市は1200mm、東京都は1500mm、高知市は2600mmである。

 
気がつくと、この街は妙に砂っぽい。道路の中央にまで砂がはみ出し、舗装を覆っている。また、ロバがひいた荷車や、イスラム教徒の丸い帽子姿が目立ち、大都市ウルムチと比べ、ローカル色があふれている。また目抜き通りからホテルへの50mくらいの道が、すばらしい。道路の上がアーケイド風のブドウ棚になっており、紫外線の強い光を適当に遮り、快い日陰を作る。湿度が低いので、意外に涼しくさわやかである。木の根元の水路には、澄み切った水が音もなくさらさらと流れている。木漏れ日が、キラキラと反射して目にまばゆい。

 部屋に荷物を置いて、近くを散歩してみた。街角の歩道には露店が開かれている。近郊のウィグル族農民が農産物を売りに来ているようだ。男はモスリム(イスラム教徒)の帽子、おんなは三つ編みと矢がすりのスカートと決まった服装である。お目当ての「ハミ瓜(グワ)」はすぐに目についた。なにせ、道端に山のように積み上げてあるのだから遠くからでも分かる。本でこれの存在を知って以来、ずっと食べたかった物の一つである。沙漠をゆく人の水筒代わりの果物であった。そのラグビーボール大の西瓜の中から、自分用にいちばん小さいのを買った。日本円で75円であった。早速ホテルに帰り、冷蔵庫に入れた。