3 神々の座・天山山脈を越えて(ウルムチからトルファンへ)
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「天山(テンシャン)越え」の入り口(筆者) |
ウルムチの街からは、遙か彼方に雪をかぶった5445mのボゴダ峰が見える。ほとんど草もない赤茶け、焼けた土漠(ゴビ)の上に君臨する雪山は、理屈抜きに感動ものである。タクラマカン砂漠を越えて旅してきた人々が、どんな気持ちでテンシャンを見上げたかが、容易に想像できる。私にはそこに神がいるような気がしてならなかった。
バスでトルファンへ向かう。大草原が、時間とともに荒れ果てたゴビになり、やがて、窓から見上げられないくらい険しい谷間になった。さらに上には蘭新鉄道が、崖に這いつくばっている。道路は未舗装で、車体は大海の小船のように揺れ、先を行くトラックの土埃が舞い上がっている。道路の端が、そのまま50mくらいの崖になり、下には黄土色の水がごうごうと流れている。中国人ガイドが言った。「みなさんが今走っている所は、2年前に大洪水が流れたところです。異常気象で雪が大量に解けだしたのです。」
テンシャンといえば、東西1200km、パミール高原に連なる大山脈である。しかも、世界の大工業地帯からもっとも離れて存在する山脈である。最高峰のトムルー峰は、標高7435mもある。それが夏の雪解けとはいえ、大洪水を起こすとは、やはり異常である。地球温暖化の影響はここまで及んでいるのだろうか。
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ステップ(乾燥草原)の発電用風車(筆者) |
やがてバスは再び平地に出るが、そこからはずっと広い土漠(土の沙漠)が続いた。地平線の方に白い物がたくさん見えてきた。飛行機のプロペラのような三枚羽根の風力発電の施設だった。オランダ製だそうだ。規則正しく何十も並んでいる。その時は凪いでいたが、沙漠を渡る風は、きっと厳しくきついのだろう。後で調べると、この辺り中国語で「風庫」と呼ぶらしい。発電用風車は、アメリカのカリフォルニアの海岸山脈やカナダ、スペインでも見たことがある。これこそ「地球に優しい=エコロジー」ものの典型であろう。日本でも北海道など偏西風が強い地域では、事故が多く「時代遅れの原発」を止めてどんどんこれを作れば良いのにと思う。