大雁塔 (筆者写)
|
山門を入ると、松のある庭が広がり、正面奥に本堂があり、その向こうに大雁塔がそびえている。大慈恩寺は、唐の高宗が648年に母のために建立した唐代最大の寺院で、インドから帰国した玄奘が、サンスクリット語(梵語)の経文を漢訳した場所でもある。大雁塔は玄奘が作り始めたと言われ、インド様式で上部がだんだん狭くなる正方形七層64mの塔である。白っぽい土色で屋根には雑草が生えてはいるが、どっしりとした形で、市内どこからでも望むことができる誠に絵になる塔である。
塔に上ってみることにした。入場料を払って入り口を入ると、四面それぞれの真ん中に縦長の窓があり、東西南北に向いている。その幅だけの通路が十字状に交差し、その部分の部屋状になったところに階段がついている。階段はかなり急で、最上階まで一気に歩くと、息が切れる。そこから市街を見下ろすと、BC1134年の西周から907年に唐が滅びるまで、およそ11代、千年も首都であった街が360度に広がり、そしてその霞んだ中から、街を取り巻く城壁や鐘楼や鼓楼が、浮かび上がって見える。自動車のエンジン音やクラクションの音や街の無機的な騒音がなければ、今も唐の町並みとも思える光景であった。
|