18 空からみた厳しい自然の中の河西回廊(かせいかいろう)
朝、街の近くにある敦煌空港へ行くと、1時間ほど出発が遅れるという。客が多く、同じ便名の飛行機が3機あるという。これも初めての体験であった。「だいじょうぶかな?」と一瞬不安がよぎる。荷物の積み込みでさらに待たされて、中国西北航空の蘭州経由西安行き英国製BAe機は、滑走路上の砂をもうもうと巻き上げながら、よたよた滑走した後やっと離陸したのであった。
BAe146
1時間ほど飛んで、機が高度を下げてくると、大きなうねりの沙漠が広がり、その向こうに祁連(きれん)山脈が大海の波のように広がっているのが目に入った。沙漠の風紋もくっきり見える。遙か彼方に集落らしいのが見える。緑がアヒルの足のように黄色い沙漠に突き出、人家が離れて点々とある。集落の形がなぜ方形でないのか不思議だったが、近づくにつれて理由が分かった。沙漠の砂が畑に入り込み、緑を侵食しているのである。空から見ると、まさに「自然との闘い」に見えた。
さらに進むと、山谷が無数にちりばめられた山岳地帯に入った。しかし、ただの山ではない。谷底から頂上まで段々畑(棚田)が作られ、畑のないところははげ山だ。それが視界全部に広がっている。とても日本ではこのスケールのものは見られない。まさに「耕して天に至る」光景である。感心して見ていて、はっと気がついた。真夏なのに緑がない!一本も植物が生えていないのだ。そういえば昨日中国人ガイドが、「この辺り、一年も雨が降ってない地区もあります。」と言っていた。そこからは離れてはいるが、ここもそうに違いない。地球の「温暖化」で、大雨が降って洪水になる地域と、雨が降らず干ばつになる地域が増加しているが、それを目の当たりで初めてみたような気がした。道理で人影が見えないはずだ。いくら季節風の影響がない地域でも、真夏に緑がないのは奇異な感じである。