熱帯の「暖房」列車
日本人観光客が行くスポットで、バンコク以外で主なところは、北部のチェンマイか歴史の詰まった街の元首都アユタヤであろう。私も例にもれず行くことにした。というよりも、「タイに行ったら、アユタヤにはぜひ行こう。」と決めていた。「地球の歩き方・タイ編(No12)」によるとこうである。少し長いが、分かりやすいので引用する。
*世界文化遺産に登録された古都の遺跡*
バンコクから北へおよそ80km、チャオプラヤ川とその支流に囲まれた中州にアユタヤの町はある。ここは1350年から417年間、5つの王朝、35人の王がアユタヤ王国の華麗なる歴史を築いた場所である。17世紀には遠くペルシャやヨーロッパ諸国とも外交関係を結び、イギリス人からは”ロンドンのように見事”と讃えられたほどの国際都市。しかし、たび重なるビルマとの戦いを経て、1767年アユタヤは陥落する。・・・
ファランポーン駅正面
日本語ツアーに加わったらホテルまで迎えに来てくれるものを、物好きにも汽車で行くことにした。金の問題もあったが、日本人と一緒に行動したくなかったのだ。
4日目の朝ファランポーン駅8:05発の「各停」に間に合うように、例の「芋の子洗い」のバスに乗った。駅に着くと、非常用兼昼食用として世界ブランドの「ダンキンンドーナット」とミネラルウオーターを買い込んだ。外国で食事に慣れないときや衛生上の疑義があるときは、アメリカ系の外食ものを買うことにしている。また料金も安い。
さて、切符を買いにいって驚いた。代金は15バーツ、日本円でわずか45円弱の三等車である。「三等車!」、日本の中高年には懐かしい響きである。この列車に「冷房つきの二等車はない」と、駅員はいう。さっき買ったドーナツが一つ50円位である。公共料金が安いのか、日本円が強すぎるのか? しかし労働者の給料から計算すると、10倍して何となく計算は合う。そうするとドーナツが高いということになる。
閑話休題、列車は日本ではもう珍しい本当の蒸気の「汽車」であった。走り出すと、蒸し暑い風と煙が体にまとわりつく。面白かったのは、車内の物売りである。入れ替わり立ち替わりやってくるのだ。観察したら、商品は以下のようであった。
鳥の串焼き |
車外の風景 |
その他にもいろいろやってきて、まさに息をつかせない物売りオンパレードである。売り子といっても若い女の子は少ない。ゴムゾーリを履いた子供からおばさん、おじさんもいて、しつこく行ったり来たりする。日本のように当局の許可を得ているようにも見えない。通り過ぎる車掌から切符を買っているところを見ると、「無認可黙認個人営業」のように見える。車掌は何も言わない。その他にオレンジ色の衣を着た坊さんが、お布施を貰いにまわってくる。「さすが仏教国だなあ。」と思っていると、坊さんは一仕事が済むと、デッキに出てうまそうにたばこを吸っていた。「お勤め」の後の一服であろうが、人生にくたびれたような横顔を見ていると、不思議な感じがした。