7 台南から台東へ(食在台灣)(七日目)
 朝9:00時、台南発高雄行きの普通電車に乗る。ちょうど日本の「通勤電車」のようで、サラリーマンや学生が多く乗っていた。

 途中で「岡山」駅に停車。筆者の故郷と同じ名前だ。あわてて写真を撮った。


(左)「食在台湾」といっても、最後まで食べられなかった「点心」。私たちはいつも、B級グルメのアラカルトであった。

 高雄駅で下車。手元が不如意になってきたので、外為銀行の「台湾銀行」を探す。二万円分を両替する。たぶん両替はこれが最後だろう。「台湾元」は日本では交換できない。台湾紙幣は、日本ではタダの「紙切れ」になるのだ。

 高雄は台湾第二の大都会。ここは何でもあるが、日本と似すぎていて旅行者にはつまらない。駅前は、地下を掘り返して雑然としていた。「セブン・イレブン」で弁当を買ってから、11:15発の自強号に乗車。


高雄駅前にて
 途中の駅は、椰子が植わり「南国ムード」である。「南州」という「西郷隆盛のような駅で後ろは田園が広がる。





南州駅にて

 「屏東」を過ぎれば、このようなのどかな田園風景がつづく。柑橘類の木や水田、サトウキビが目につく。





 やがて海が出てくる。バシー海峡である。沖には、中華民国海軍の軍艦の姿も見え隠れする。一見のどかではあるが、明らかにここは「前線」である。






 岬の山間部を走っていた列車は、いきなり海に出た。「大武」からは、線路は海と並行に走る。この辺りから太平洋に入る。「水平線」がくっきりと左右に広がる。島影は全くない。





 この辺りは山が海に迫り、川の長さは短く水量は大変少ない。今は「乾期」としても、あちこちで、「今年は雨量が少ない」と聞いた。雨が多いはずの台湾も、「異常気象」なのだろう。



 海岸に沿って列車は走るが、線路と集落の間は「集約的」に土地利用が行われ、山の斜面も椰子などがぎっしり植えられている。土地は本当に狭い。
 台東に近づく(北に行く)ほど、川は水量が減り、左のような河原が現れる。集落は山際にある。
 この「台鐵・南廻線」で、およそ2時間半で台東新駅に着く。町中の台東旧駅は、すでに「廃駅」にされているらしい。終着駅なので、全員がここで下車する。「平日の昼」なのに、ぞろぞろと多くの人が出てくる。鉄道は「庶民の大切な足」だということが分かる。



台東新駅にて
 「新駅」はかなり新しく規模も大きいが、左の写真のように味気ない雰囲気である。ここは大変蒸し暑い。構内各所にある大型エアコンの吹き出し口前だけが、「極楽」である。

 駅前は大変広いが、ビルが散在する以外には、ほとんど何もない。東海道新幹線ができた頃の「岐阜羽島駅」前の雰囲気だ。ただしこちらの方が、駅の建物はずっと立派である。


台東新駅にて
 市内まで4kmほどらしいが、一時間に1〜2本しかバスがないという不便な駅である。私たちも案の定、バスに乗り遅れた。タクシーはいくらでもあったが、私たちはふつうは使わない。外で待つことにした。

 立っていたら、色は浅黒いが、顔立ちの整った中年婦人が、日本語で話しかけてきた。小学生くらいの女の子二人を連れている。自分の娘と姪らしい。この辺りに多い少数民族の「阿美族」、仕事は「幼稚園の先生」と名乗った。


台東新駅前
 彼女の母親はずっと日本語を使い、父親との日常会話もいつも日本語だったといった。「それではお孫さんと話ができないでしょう?」と聞くと、「そうだ」という。子どもたちは学校では中国語を習うが、祖父母は日本語と阿美語だけなので、孫との意思疎通に困るという。

 昨年、アメリカの「日系二世」を調べにカリフォルニアに行ったときも、「日系一世と三世」の間の「言葉の断絶」、即「意思疎通の断絶」が問題であったのと類似している。バスの中でもこういう話しをしながら、旧駅近くのバスセンターで分かれた。三人はこれから更に一時間バスに乗るという。

台東旧駅(廃駅)
 旧駅前の鄙びたホテルに宿を決めた私たちは、身軽になって商店街へ向かった。町は思ったより広く、交通量も多かった。あちこちに外に椅子、テーブルを並べた大衆食堂が目につく。何となく、看板の漢字の意味が分かるからうれしい。「簡体字」を使う本土より、「繁体字」を使う台湾の方が読めるのだ。日本でいう「旧字」なので、筆者より若い世代は読めないかもしれない。


何となく「臭そうな」店?

写真は加工してあります             
 商店を冷やかしながら歩き回り、終わりに未だ食べていない「鍋料理」に挑戦してみた。この大衆食堂の客は5、6人いたが、その中に190〜195cmくらいの大男がいた。バスケ選手の雰囲気である。彼は何度も何度もご飯を「お代わり」していた。よく見ると、ご飯と漬け物は「食べ放題」なのであった。二人とも「ダイエット中の身」であるが、私はこういう店は好きである。


大衆食堂で鍋をつつく
 やがて、注文した「泡菜鍋」と「鴨寶鍋」が運ばれ、台下の容器に液体アルコールが注入され、火がつけられた。食べるまでには時間がかかる。鍋は日本の「100円ショップ」で売られているような鉄鍋を使っている。食べていると、だんだん客が増えてきて満員になった。チェーン店のこの店は、けっこう人気があるらしかった。「食べ放題」だけに若い人が多い。満足してホテルに帰った。


これで「ご飯」食べ放題!