11 夜のイベントはウィグルの胡旋舞

 夜になると、ホテルのブドウ棚のある中庭で、「ウィグルの舞踏と民族音楽の集い」が開かれた。この踊りは中国語で「胡旋舞」と書く。辞書によると、「胡」とはもともと「西戎(せいじゅう)」で、中国から見て西方の「野蛮人」を指し、広くは中国西部から西アジアペルシャ辺の地域を意味するようだ。だから胡のついた字は、シルクロードを通ってきたと言っていい。胡瓜(きゅうり)、胡弓(こきゅう=楽器)、胡椒(こしょう)、胡麻(ごま)、胡桃(くるみ)などはすべて西方よりの流入品である。これは分かりやすい。

 さて「夕べ」の方だが、定刻になると、ホテルの滞在客や街の住民が、三々五々集ま ってきた。頭の上は空が見えないくらいぎっしりとブドウが茂り、大房もぶら下がっている。やがて、手太鼓、笛、胡弓、揚琴を携えた男楽士が登場する。舞台の後方に横に並び腰掛けると、後れて丸い帽子をかぶり、ウィグルの民族衣装を着た女性が登場する。目鼻立ちがはっきりし、明らかに漢民族とは異なる容貌である。ほほえみを持って中国語(北京語)、ウィグル語、英語、日本語でにこやかに挨拶をした。
 
 恋の歌を歌った後で、やがて踊りが始まった。女性が一人で踊る。次に若い男女がペアで踊る。特に手や指先の動きが繊細で、一つひとつに意味があるらしい。旋回も多く取り入れ、動きも早い。この動作、音階はどうみても西アジアのものだ。観光客、外国人は盛んにフラッシュをたき、ビデオを回す。地元の人間は、座ったまま上半身だけが踊っている。歌も一緒に口ずさんでいる。私もすっかりその雰囲気に酔っていた。                              


故旋舞