終わりに
 日本人が訪れる外国人の第2位になっているオーストラリアでは、1994年には、およそ72万人がこの国を訪れました。あまりにも有名なゴールドコーストやシドニーのハーバーブリッジには、まさに「石を投げればあたる」ほどの日本人がいます。また、夕暮れ時のエアーズロックは、にぎやかな団体客を詰め込んだバスが集います。国内の旅行会社のパンフレットも、「オーストラリア6日間・15万円」などと宣伝しています。

                 
 特産品オパール
 
 初めて海外旅行をする人には、見所が要領よく回れるし、日本人ガイドがつくので、よいと思います。しかし、何度も海外へ行く人でさえ、たびたびガイド付き団体ツアーを利用しているのが現状です。あの「日本人街」のゴールドコーストのメインストリートの看板の半分は日本語のものです。いわく「公認免税店・時計、オパール」「シャネルの香水が30%off!」「当店は日本円が使えます。」などなど。まるで日本国内のようで、客のほとんどが日本人です。ホテルの客も、日本人が半数以上で、日本語だけでも何とかやれそうです。「日本人専門」のスリが商売になるぐらいだそうです。どちらにしても、日本人は、「金づる」なのでしょうか。  

                           オペラ・ハウス(左)と夜のシドニー

 観光以外では、最近の傾向として、高校、大学の「ホームステイ」が、米国からオーストラリアへ移っているそうです。いぜんとして、米国の人気が根強いものの、治安(ちあん)の悪さから敬遠されているようです。参加した学生、生徒は、ほとんど「オーストラリアファン」になって帰国するようです。コアラ、カンガルーと言ったこの国の定番に触れられたということもありましょうが、
オーストラリアの人々の暖かい人間性によるところが、大きいと思われます。ホストファミリーの家族も、出身の国は多種多様ですが、心はオーストラリア人で、まるで家族の一員のように扱ってくれます。私が同行した学生たちは、みな、帰国の時にホストマザーと抱き合って涙し、「このままこの国にいたい。」と言い続けていました。現に、帰国後、卒業後に正式に留学をすると決めた者もいます。

 これをみると、
肌の色、言葉、習慣が違っても、人間と人間の関係、心の結びつきが大切と言うことが、よく分かります。この国には第2次大戦で、日本軍と戦って死んだ者が17501人、日本の捕虜になった者が22000人、そのうち死んだ者が三分の一(前出「オーストラリア発見」)と戦争の傷跡が残っています。この大戦の退役軍人を中心に反日感情が強いのも事実です。しかし、上のような民間の「国際親善」の積み重ねが、これを和らげてくれることでしょう。また、単に「ホームステイ」にとどまらず、大学間で姉妹校縁組みと単位の相互認定、そして教員間の客員・交換制度と言った高度の文化的交流や県単位(例えば、岡山県と南オーストラリア州)の教員派遣や神戸とブリスベーンの姉妹都市縁組みのような行政主導の実績も増えています。
 
 中公新書「オーストラリアと日本」の作者ウォーレン・リードは次のように言っています。「
...日本人旅行者は標準的な団体と高い比率の新婚カップルからなるが、注目すべき特徴は、大勢の若者がそれぞれの独立したやり方で冒険を探しにオーストラリアへやってくることだ。ますます多くの日本人が、レンタカーを借り、地図を片手に−そしてオーストラリア人の案内で−都市から地方へ出てゆき、ありきたりな観光バスのコースとは別の、彼ら自身で選んだ経験をしている。これは心強い徴候であり、観光ブームが最初にオーストラリアを襲ったときにはあまり見られなかった交歓につながった...。
 
 この様に、「物見遊山(ものみゆさん)」、「買い物旅行」、「社員旅行」的日本人が減少しているのはよいことですが、まだまだ大勢を占めています。表面的には、裕福になったから、国内旅行の行き先が、外国に変わっただけ−の様に見えます。その原因としては、いくつかのことが考えられます。
英会話能力の不足などはよく言われることですが、根本的な問題は、前出のウォーレン・リードも指摘するように、日本人自身に外国人とパートナーとなり、友人となる姿勢が弱いことです。オーストラリアは、太平洋をとりまく国の一員であり、広い意味のアジアの一員であり、将来にわたって「友人」であり続けるべき国なのです。単に、日本が資源を買うとか、工業製品を売る−という次元の話ではないのです。  

 海外でホームステイをを経験した中学生・高校生や留学をしている大学生、「ワーキングホリデイ」で働きながら英語を学んでいるヤング、バッグとGパンとわずかな金で世界を回って「人間づきあい」をしている人たち、社会へ出てすぐに青年協力隊に応募した若者たち、両親のしごとの関係で海外で育った子どもたちが、次第に増加しています。この人たちが社会の中心になったとき、日本は本当の意味で、
「国際化」された社会になったと言えると思います。そういう意味で、私は若い人たちに、大変期待しています。彼らにもっともっと外国に出かけ、心を開いて外国人とつきあい、素直な目で世界を見て欲しいと願ってやみません。                                                                                  
                                       (おわり)
サイト内リンク:オーストラリア一周・キャンピングカーの旅

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(おことわり)上記の文章は1995年時点の資料に基づいて書かれました ( 1995・11・8脱稿 )

 
 参考および引用文献 (並絵葉書・リーフレット)
REFERENCES
                                     
1.オーストラリア発見   豪日交流基金発行 1995
2.オーストラリアと日本 ウォーレン・リード 中公新書
3.ABORIGINES TODAY School Project No.2  
  PETER LEYDEN PUBLISHING HOUSE PTY LTD NSW AUSTRALIA
4.COWRA DISTRICT VISITORS'GUIDE  
  COWRA TOURIST & DEVELOPMENT CORPORATION COWRA NSW AUSTRALIA
5.ULURU Outback sky over Uluru Nucolorvue Productions Pty.Ltd.
6.地球の歩き方 4 オーストラリア ダイアモンド社          
7. Sydney Australia (絵ハガキ) Nucolorvue Productions Pty.Ltd
8. The Olgas, NT by Lamotte Editions P.O.Box461 Airue Beach 4802 QL
9. KOALA Nucolorvue Productions Pty.Ltd.
10. Uluru-Kata Tjuta National Park リーフレット Visitors Guide
11 Australia On top down under! NucolorvueProductions Pty.Ltd., Australia
12 Central Brisbane (Aerial view) G.Hughes, 20Hasp st.,Seventeen Mile Rocks,QLD4073
13 Sidney Cove NucolorvueProductions Pty.Ltd., Australia
14 Coelurosauer Leaflet of Park Guide Lark Quarry Environment Park
   QLD National Parks and Wildlife Service

 
 閲覧及び引用掲載したHPサイト

 Very special thanks to these sites and companies.

コアラ、カンガルー、地図(オーストラリア観光局HP
http://jp.australia.com/faq/koala.html
ウルルor Ayers Rock(オーストラリア・ナウHP)
http://www.wave.au.com/australia/seven/no1.html
オーストラリア国旗(日本国外務省HP)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/world/kokki/k_taiyo.html
アボリジニーの旗、”The Flag of the world ”のHP
http://www.j-flags-java.org/new_page_13.htm
アボリジニーと白人の娘
http://www.austlii.edu.au/au/orgs/car/finalreport/index.htm Kakadu, NT The Blue paintings
Welcome to Cowra, Australia
カウラのオフィシャル・ホームページ http://www.cowra.org/(上をクリック)
アボリジニー(ディンカムオージークラブ) http://www.win.ne.jp/~dinkum/ 
                              
  
オーストラリア旅のあれこれ
"Some tips about Australia"
   Original written in 1995  
 (C)1995 All Rights Reserved
    Revised 2nd Edition for HP, June 2001
  (C)2001 All Rights Reserved by Kenji Kakehi

 

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